今触れているもの

見聞きしているものについて、徒然なるままに。


まずは音楽から参ります。
今、この記事を綴っている机の上には、ディスクユニオンで買ったCDが5枚。
『Ref:rain / 眩いばかり』Aimer
Catch the Moment』LiSA
『All Of Us』GLIM SPANKY
『自由の岸辺』佐野元春 & THE HOBO KING BAND
『Grand Piano Canyon』Bob James
なんて格好良いプレイリストでしょう(笑)。
せっかくなので肩慣らしに久しぶりにレビューなど。


『Ref:rain / 眩いばかり』Aimer
両A面シングルの内、『Ref:rain』をgoosehouseカバーにより知りました。
雨に纏わる楽曲を4曲収録した、雨男にはもってこいの(?)シングルですが、ここでは表題の2曲ではないカップリングについて。
3曲目『After Rain -Scarlet ver.-』、所謂セルフカバーですが、本人へのインタビュー*1を読むに、文字通り再度光を当てるべき楽曲なのは、彼女の経歴に疎い私にもはっきりと感じられました。
私も含め、Aimerのアンニュイな声に魅力を感じる方が多いと思うのですが、このヴァージョンでは確かな力強さが、agehaspringsによる光を感じる音作り(長らく女性ヴォーカルのJ-POPを聴いてきましたが、ここまで自然とやってのけるのは相当難しいと思われます)と相俟って、4曲中一番陽に振ったこの曲が一番感動的という結果を生んでいます。
朝の陽光の中でこれを聴いて、眩しさに涙が出たらそれはとても幸せな一日に違いない。


そしてトリを飾るのがcoccoの名曲『Raining』。私自身思い入れが強い楽曲なので、いつも以上に長くなることを覚悟して読み進めてくだされば幸いです。
オリジナルが発表された当時も耳にはしていましたが、私の意識にはっきり上がったのは2006年の初めくらいだったと記憶しています。
明治屋の京都三條ストアーで開店前の品出しをしていた私は、有線でこの曲に「出逢った」のですね。一応、知っている曲にも関わらず、心を奪われて、気づけば涙が浮かんでいました。大学生なりに公私ともに色々なことを経験していた時期に、とても印象深く心に刻まれた1曲となりました。
約2年後、私はサークルの演奏会において女性ツインヴォーカルとリードギターに参加してもらって同曲を披露しますが、これが自身が参加したセッションの中で最上だったと、今でも自負しています。
少し話が脇に逸れることを恐れずに続けるなら、このサークルでの経験は、実は今私が取り組んでいる事業とはっきりとリンクしていて、つまり自身がプレイヤーとしてではなくプロデューサーとして活躍する方が、面白いということに今更ながら気づいたのですね。
『Raining』を上記メンバーで取り組んだときに、私は演者として決して素晴らしい腕前でなかったですが、集まった4人で奏でた音は、もっと上手い同期のプレイヤーと交代したとしても再現されなかったはずで、単純に一期一会というだけでなく、そこに至る各人の成長や関係性の変化といった過程まで含めて、置き換え不可能な内容を作り上げられたという意味で、これは自信を持って良いのだな、と十数年経ってようやく思えるようになりました。
よく冗談で「ギターを膝においてダベっているサークル」なんて言っていて(それは事実なのですが)、ストイックとは程遠い音楽サークルでしたが、楽曲に対して理想的なメンバーをその都度考えて準備するという、柔軟かつ目利きであることが求められる場だったのではないか、と少し大げさかもしれませんが、あのとき経験したことが確かに今の私を作っています。
さて曲の話に戻りますと、絶望を歌うと右に出る者がいない*2Aimerの声で『Raining』を歌うとどうなるのだろうと、CD音源を入手したと言っても過言ではないのですが、不思議なまでに昇華され美しさだけが結晶したカバーになっていました。
原曲の持つ力は失われていませんが、しかしcoccoの狂気的な印象はここにはもう残っていません。Aimerはあくまでエモーショナルに歌い上げ、音楽的にも原曲に負けず劣らずドラマチックなのにこの違いが生まれるのは、時間の経過によるものではないでしょうか。
オリジナルに織り込まれた死に対する強い感情は、時とともに薄らいだのだ、と。
Aimerほどの歌い手であればcoccoに成り代わって感情を代弁することは容易いはずですが、そういう心身のありようとは別の次元で、つまりcoccoが今セルフカバーしても同じ結果ではなかっただろうか、と思うのです。
このカバーが素晴らしいと思うとともに、オリジナルに封印された怖いほどの感情に触れて初めて、意味のあるカバーだとも感じるので、ぜひ原曲に触れていただきたいと強く願います*3




Catch the Moment』LiSA
例によってgoosehouseのカバーで知った曲、そしてLiSAだったのですが、こういう出会いを引き寄せられるのは昔から変わっていないなぁ、と我ながら呆れるほど関心しています。
題名に全てが凝縮されていて、まさに今に生かされ、今に試されている我々対する賛歌を、音楽の面としてはJ-POPの範囲で最大限サポートしているという印象です*4
せっかくなのでハイライトだと思われる歌詞を引用致します。
「何度でも 追いついたり 追い越したり キミがふいに分かんなくなって 息をしたタイミングが合うだけで 嬉しくなったりして 集めた一秒を 永遠にして行けるかな」
経歴などを追うに、アニソン側からの支持が絶大のようで、そちらに造詣が深い友人(画面の向こうの貴方です・笑)に言わせれば、歌唱力は元より感情を乗せることに長けているとの評でありました。
DVD付属のヴァージョンが手元にあり、MVも楽曲の疾走感に倣い良作だと思いますが、如何せんジャケットとCD版面のデザインに難ありかと…上述したAimerのジャケットは対照的ですね。




『All Of Us』GLIM SPANKY
大阪に生活拠点を置いているとFM802を聴く機会が多く、そこで出会った楽曲です。
DJの野村雅夫が夕方の「Ciao Amici!」に担当番組をスイッチして間もない頃だったように記憶しているのですが、GLIM SPANKYの2人がこの曲のリリース時にゲスト出演しており、「番組のテーマ曲に相応しい」といった意味の言葉を野村雅夫が残したのは至言だと思います。
「今日が終わる頃 僕らは笑っていますように どうか 戦いながら生きる明日が晴れますように」なんて、ここに抜き出しただけで素晴らしいですよね。
夕暮れ迫る頃、車を停めて耳を傾けた時間は忘れ難いです。
また、これはCDではなく配信版限定ですが、4曲目にthe brilliant green『There will be love there 〜愛のある場所〜』がカバーされており、力強いヴォーカルとソリッドなギター、そして壮大なストリングスによる再解釈は掛け値なしに格好良いです。ちなみに、私は原曲の方がもちろん好きです(笑)




『自由の岸辺』佐野元春 & THE HOBO KING BAND
佐野元春の曲を自ら手に取ったのはこれが初めてです。
私の通ってきた音楽遍歴からは遠い気がしていたところ、ロックを初めとして音のサラダボウルのような印象をアルバム全体から受け、とても面白く夜の高速などで気に入って流しています。
セルフカバー中心のアルバムゆえ、本来であれば発表時と現代における変化などを楽しむのだろうと思いますが、私としてはひとつだけ浮いて聴こえる曲についてどうしても言及したいと思います。
それは『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』。同名のアルバムからのシングルカットで、時代が平成に変わる頃の楽曲です。多くのヴァージョンが存在するライブでの定番曲だそうですが、私にはこの曲だけアルバムの中でとても華やかに聴こえたのです。
音作りに負うところもありながら、それだけではないもっと根本的な違いがあるのではと、歌詞カードのクレジットを確認したところ、これだけ収録が2001年で、他の楽曲は直近2,3年間の収録でした。
2011年3月11日を境に日本の価値観は一変したというのは良く言われることですが、このアルバムにおいて『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』の音が特別輝いていることは上記収録時期からし当然の帰結だろうと考えています。
キャリアが長いアーティストがセルフカバーする際、時代の変遷が意識されるのは当然のことで、それに加えてカバーした時代によっても、その表現は影響を受けるものでしょう。そこに価値観を揺るがすような出来事があれば尚のこと、もはや同じ表現は生まれようもありません。
とても煌びやかな音のシャワーを浴びて、そんなことを考えました。




『Grand Piano Canyon』Bob James
私が15年来、聴き続けているFourplayが生まれる端緒となったBob Jamesのソロ名義アルバムです。このセッション時点ですでに、Lee Ritenour以外が揃っていて、Fourplay誕生前夜の高揚感が、聴いていても伝わってきます。
特に冒頭の『Bare Bones』から『Restoration』にかけての流れは最高で、ここを聴いたら満足してしまうくらいです。




本や映画のことも書こうと思っていましたが、つい音楽に力が入り過ぎましたので、また次回(笑)

*1:「こんな子もいたんです!」って表現が良いですね(笑)
https://natalie.mu/music/pp/aimer14

*2:LiSAのこのインタビューでAimerの声に言及していることは特筆に値すると思います。
https://natalie.mu/music/pp/lisa15/page/3

*3:https://open.spotify.com/track/7LhDbDN3axNzy49taBmiF2?si=hx8Kom3NSg2650YqvofeUw

*4:クレジットによるとAimerと同じagehaspringsによるプロデュースなのですね、素晴らしいチームだなぁ。